大阪府で飲食店の命綱「時短協力金」の支給がずばぬけて遅れていることが判明。コロナ自宅死に続き、またもや全国ワーストの汚名である。

 13日付の朝日新聞によると、今年1月に2度目の緊急事態宣言が出された11都府県のうち、6府県の支給率は6月上旬時点で9割を超え、東京が84%。最下位の大阪は64%と突出。対応する職員が3月末まで2、3人しかいなかったという。府の担当者に聞いた。

「対応できる職員の人員不足などもあり、業務を全て民間に委託。委託先は人材サービスの『パソナ』です。ところが、申請書類の不備などが多く、判断に迷うケースが多々あり、保留がたまったため、遅れが生じた。パソナの人員は当初の200人から400人に増員し、助言する府職員も現在は20人で対応しています」(商工労働部経営支援課)

 仕事はノロマでもパソナへの委託料は巨額だ。1月28日から6月末までで20億8000万円に上り、さらに業務が継続する限り、7月以降も費用が発生し続ける。

「委託先の選定は時間がない中、2社に声をかけました。もう1社は見積もりを出さず、辞退したため、パソナに発注しました」(前出の担当者)

 費用が高いか、安いかも分からぬままパソナに「丸投げ」とは驚きだ。

 パソナグループ広報部は、支給の遅延について「大阪府さまが仕様書に示された手続きにのっとり、適正かつ迅速に通常処理を行ってきております」とし、委託費用の内訳は「守秘義務」を理由に回答を拒んだ。

 パソナグループの竹中平蔵会長は2012年に日本維新の会の最高顧問格とされる衆院選の候補者選定委員長に就任。政策ブレーンを務めるなど維新と関係が近い。

 巨額の税金を“言い値”でフンだくられ、リターンは「遅さ日本一の命綱」――。まるでパソナ支援金とは、吉村知事はほんまもんのワースト首長や。

維新は「パソナ丸投げ」病! 21億円の時短協力金業務で大幅遅れとデタラメ発覚したのに新しい仕事発注 橋下時代から竹中崇拝が
リテラ2021年11月21日 08:00

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 それを象徴するのが、コロナ下で営業時間の短縮に応じた飲食店などに対する「時短協力金」の支給の大幅な遅れだ。

 大阪府は今年1月に時短協力金の支給業務についてパソナと随意契約し、当初の予算額は3月末までで約6億8000万円だった。しかし、緊急事態宣言の期限が延びたことで予算も膨れ上がり、今年6月末までで20億8000万円に増額。もちろん、7月以降も費用が発生している。

 だが、これほどの予算をかけながら、大阪府では「時短協力金が来ない!」という声が続出。今年6月に朝日新聞が調査したところ、1〜3月に出された緊急事態宣言の対象となった11都府県のうち、福岡県の99%をはじめ、愛知県や京都府、兵庫県などは90%以上の支給率だったが、一方、大阪の支給率はわずか64%。もちろんこの数字は、11都道府県のなかで最低だった。

 しかも、この支給の遅れの原因は、パソナに丸投げしたことにあった。

 というのも、大阪商工団体連合会(大商連)が6月23日に大阪府と交渉をおこなった際、府側は遅れの原因について「審査現場を担当する府の職員が2月当初2、3人しかいなかった」と説明。さらに府の担当者は、パソナに委託しているため「(パソナ側に)直接指導することは偽装請負になるためできない」「私たちは委託業者からの相談を受けて判断するという配慮をしている」と述べたという(しんぶん赤旗2021年7月1日付)。

 さらに、この時短協力金の支給業務にかかわっていたパソナの元契約社員が、府に対して意見書を提出。この元契約社員は当時の状況について「2月に書類不備とされた協力金の申請書が、4月になっても放置されていた。3月分の不備書類は手が付けられていない状態だった」「連絡が来ないという業者さんの声もあるが、放置していたから連絡が無かったといえる」とし、また書類放置の背景について「パソナ側が協力金支給のノウハウ(包括電算処理業務の経験)を持っていなかったことが大きな理由」と指摘。そして、「ノウハウが無いのにどのように積算(委託にかかる費用の算出)をしたのか」と、パソナへの委託費用の積算根拠自体にも疑義を呈したというのだ(前出・しんぶん赤旗)。

 大阪府の職員が支給の遅れを「パソナへの丸投げ」にあったことを認め、挙げ句、業務にあたったスタッフ自身が「パソナ側にノウハウがなかった」「ノウハウがないのにどうやって委託費用は積算されたのか」と疑問を投げかける──。もはや異常事態としか言いようがないだろう。

 しかも、こんなデタラメな仕事ばかりしているのに、維新が牛耳る大阪府は今回、またまた「国際金融都市構想」の窓口運営事業をパソナに丸投げしたのだ。いったいなぜパソナにばかり依存するのか。

 背景にあるのは、維新、そして維新の創始者である橋下徹氏とパソナを率いる竹中氏の思想的な親和性だ。そもそも竹中氏は、橋下氏を小泉純一郎になぞらえて称賛し、それを受けて橋下氏は2012年に国政政党として日本維新の会(旧)を立ち上げ、次期衆院選に擁立する候補者を選定する委員会の委員長に竹中氏を抜擢。その理由について、橋下氏はこう語っていた。

「竹中さんの考えにぼくは大賛成ですから。小泉元首相のときの竹中さんの考え方についてはいろいろと意見があることは承知していますけれども、基本的な価値観、哲学は、ぼくは竹中さんの考え方ですね」 (佐々木実『竹中平蔵 市場と権力──「改革」に憑かれた経済学者の肖像』講談社文庫)

自分の基本的な価値観・哲学は竹中さんの考え方と同じ──。つまり、竹中氏というのは橋下氏と並ぶ「維新の生みの親」「維新政治を体現する存在」なのだ。

 竹中氏はこの候補者選定のための討論会でも「自由と規制緩和という意味で、TPPに本当に心から賛成しているかどうかが、ものすごく重要な試金石になる」と語ったというが、橋下氏から綿々とつづく大阪の維新政治では、今回のように「公金の無駄遣い」を槍玉に挙げて攻撃する一方、規制緩和と民間の活用という「行政改革」によって、パソナが深く食い込んでいった。

 そもそもコロナによって大阪府では突出して多い死者を出したが、その原因は維新政治のツケによるものだった。橋下氏は大阪府知事・市長時代に医療福祉を切り捨て、公立病院や保健所を削減したほか、医師・看護師などの病院職員、そして保健所など衛生行政にかかわる職員を大幅に削減。もちろん、こうした医療福祉の削減は大阪にかぎったことではなく、小泉政権における竹中平蔵の新自由主義路線により日本全体で起きたことだが、「竹中氏と価値観・哲学は同じ」だと言う橋下氏、そして維新政治のなかで大阪は突出してこうした行政サービスを削減してきたのだ。

 そして、大阪はコロナで国内最多の死者を出しただけではなく、行政サービスを数十億でパソナに丸投げという維新政治によって、コロナ対策に身を削って協力した飲食店をも苦しめたのである。

 だが、維新政治とパソナが大阪の行政サービスを破壊している例は、これだけではない。とくに酷いのは、生活保護申請業務の問題だ。

 昨年11月には、大阪市内の保健福祉センターが生活保護申請者に対し就労指導として渡した履歴書の見本に「パソナ太郎」「大阪市立パソナ中学校卒業」などと書かれていたことが話題となり、「大阪太郎」ではなく「パソナ太郎」という見本が作成されているほどにパソナが行政サービスに食い込んでいることが浮き彫りになった。だが、問題が深刻なのは、パソナへの委託が生活保護の受給抑制する仕組みになっていることだ。

 大阪市では生活保護受給者などを対象にした「総合就職サポート事業」を実施しているが、この事業もパソナをはじめとする民間企業に委託。そして、この「総合就職サポート事業」では、「生活保護受給者が支援によって就職し、保護廃止となった場合、1人当たり6万1111円を委託料に加算する」という特約条項があるというのだ(しんぶん赤旗1月28日付)。逆に、「支援を受けた人の就職率が50%未満であれば、基本委託料から割合に応じた減額」がおこなわれるという。

 生活保護の廃止に持ち込めば「報酬」が与えられ、「成果」が挙げられなければ減額される──。生活保護を受けることは当然の権利で、それぞれの事情に照らし合わせた対応が細やかになされるべきものであり、受給抑制を目標としてこうした「成果主義」を持ち込むことは本人の意に反する強引な就職支援や尊厳の毀損をも招きかねない危険なものだ。

 実際、現場では〈民間職員が「何でもいいから(求職活動を)」と強要したり、「求職活動をしなければ、保護が受けられなくなる」などの強い言葉で、利用者に実質的な「指導」を行ったりする事例も報告〉されているというから、事態は深刻だとしか言いようがない。だが、これこそが橋下・竹中両氏が目指す行政のあり方であり、同時に竹中氏が会長を務めるパソナにどんどん税金が流れていくのである。もちろん、そうして民間に丸投げすることで行政サービスは低下していく一方だ。

「身を切る改革」を叫びながら実際には維新がまるで身など切っていないことは、吉村知事の文通費100万円受け取りと使途公開の拒否、さらには政党交付金という最大の既得権益を手放そうとしない維新や橋下氏の姿勢からも明らかだが、それは大阪という維新政治の舞台で繰り広げられてきた問題でもある。そして、維新は「生みの親」たる竹中平蔵という「既得権益者」に甘い汁を吸わせ、コロナであれほどの悲惨な結果をもたらしたのである。

 だが、こうした問題をまったくメディアは指摘せず、そのためにいまだに「コロナ対策失敗の戦犯」である吉村知事が「改革の旗振り役」だともてはやされるという地獄絵図が繰り広げられている。こうした報道が来年の参院選でのさらなる躍進につながれば、いよいよ全国に維新政治が広がり、大阪のように行政サービスが壊されていくのは必至。つまり、ますます竹中氏の高笑いが止むことはないだろう。

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大阪府は時短協力金支給も全国ビリ 委託先パソナに20億円
公開日:2021/06/15 13:50 更新日:2021/12/31 08:38

 大阪府で飲食店の命綱「時短協力金」の支給がずばぬけて遅れていることが判明。コロナ自宅死に続き、またもや全国ワーストの汚名である。

 13日付の朝日新聞によると、今年1月に2度目の緊急事態宣言が出された11都府県のうち、6府県の支給率は6月上旬時点で9割を超え、東京が84%。最下位の大阪は64%と突出。対応する職員が3月末まで2、3人しかいなかったという。府の担当者に聞いた。

「対応できる職員の人員不足などもあり、業務を全て民間に委託。委託先は人材サービスの『パソナ』です。ところが、申請書類の不備などが多く、判断に迷うケースが多々あり、保留がたまったため、遅れが生じた。パソナの人員は当初の200人から400人に増員し、助言する府職員も現在は20人で対応しています」(商工労働部経営支援課)

 そもそも東京都は協力金業務の委託スタッフ300人に対し、300人の都職員を充てている。支給の“フン詰まり”は起こるべくして起こったようだ。

「飲食店からは審査が遅い上、厳しすぎるとの悲鳴が上がっています。ただ、こうなるのは目に見えていた。民間スタッフには裁量権がなく、府のマニュアル通り厳格に審査し、迷ったら保留にする。本来、権限を持つ府職員が陣頭指揮を執り、臨機応変に次々とさばくべきなのに、わずか2〜3人では“フン詰まり”は当然です」(府議会関係者)

 仕事はノロマでもパソナへの委託料は巨額だ。1月28日から6月末までで20億8000万円に上り、さらに業務が継続する限り、7月以降も費用が発生し続ける。

「委託先の選定は時間がない中、2社に声をかけました。もう1社は見積もりを出さず、辞退したため、パソナに発注しました」(前出の担当者)

 費用が高いか、安いかも分からぬままパソナに「丸投げ」とは驚きだ。

 パソナグループ広報部は、支給の遅延について「大阪府さまが仕様書に示された手続きにのっとり、適正かつ迅速に通常処理を行ってきております」とし、委託費用の内訳は「守秘義務」を理由に回答を拒んだ。

 パソナグループの竹中平蔵会長は2012年に日本維新の会の最高顧問格とされる衆院選の候補者選定委員長に就任。政策ブレーンを務めるなど維新と関係が近い。

 巨額の税金を“言い値”でフンだくられ、リターンは「遅さ日本一の命綱」――。まるでパソナ支援金とは、吉村知事はほんまもんのワースト首長や。

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随意契約理由書
1 案件名称
令和2年 11 月及び 12 月感染拡大防止に向けた営業時間短縮協力金(大阪市・府共
同)事業業務委託
2 契約相手方
株式会社近畿日本ツーリスト関西
3 随意契約理由
令和2年 11 月 24 日に開催された大阪府新型コロナウイルス対策本部会議におい
て、感染拡大防止のため、対象エリア及び業種を限定した営業時間短縮等の要請が 11
月 27 日から 12 月 11 日の 15 日間行われることが決定され、当該要請の協力事業者
に対して、府市共同による協力金を急遽支給することとなった。
本要請により経営に多大な影響を被る事業者に対して、可能な限り早期に協力金
を支給するため、要請期間終了翌日の 12 月 12 日からただちに申請受付を開始し申
請内容を審査のうえ、12 月中旬の支給開始を予定しており、支給に向けた体制を早
急に構築する必要があった。
本業務は、事業者からの問い合わせや申請書類の受領、保管、審査業務、不備書類
等の対応、専門家相談、口座振込業務等広範に及んでおり、短期間に集中した業務を
実施する必要がある。また、これらの業務は相関性が高いため、一括で運営業務を委
託することが合理的であった。
仮に、本業務を競争入札に付した場合、審査及び支給事務等が遅れるなど、協力事
業者へ多大な不利益(損害)を及ぼすことから、地方自治法第 167 条の2第1項第5
号(緊急の必要により競争入札に付することができないとき)に該当するため、随意
契約を行った。
また、極めて準備期間が限られる状況の中、上記事業者は、本業務のコールセンタ
ーや審査業務等を行うのに必要な人員を早急に確保できる上に、ミナミエリアの営
業時間短縮協力金事業業務委託及び他市町村における新型コロナウイルス感染症関
係の事業者応援金業務や特別定額給付金業務など、類似した業務の履行実績を有し
ていた。
以上のことから、履行能力を備えていると認められる上記事業者に対して、本業務
を委託することが本事業を安定かつ円滑に遂行するために最も合理的である蓋然性
が高いことから、上記事業者と特名随意契約をおこなった。
4 根拠法令
地方自治法施行令第 167 条の2第1項第5号
5 担当部署
経済戦略局産業振興部産業振興課(電話番号 06-6615-3774)